あたかも蒼天をよぎるかの影ふたつ、その脈動は限り無く連鎖を繰り返す。
生物多様性の保全は、地球の命たちが示す文化と経済の指針でもある。
2010年新聞日曜版に掲載記事
2010年は名古屋で生物多様性の国際会議「COP10」が開催された年である。
このタイミングに合わせて、新聞の日曜版として執筆・掲載された記事の一部(巻頭面)を記す。
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センセーショナルな
話題の本質とは
先ほど大きな話題となったワシントン条約*での規制対象候補としてモナコが提案した大西洋・地中海産クロマグロ(本マグロ)の禁輸規制案がある。
これがニュースとして報じられると、たちまち世界中で話題となった。とりわけ日本では、伝統的な食材として慣れ親しんできたマグロの刺身が食べられなくなってしまうかも知れないという思いで、多くの人が関心を持って推移を見守ったに違いない。
結果としては、昨夏から今回の事態を予想して取り組んできた日本政府とアジア・アフリカ諸国の多票によって否決されたが、これによって、我が国はマグロ類の資源管理を主導する責任をより重く負うことにもなった。
一方、マグロで負けを喫したEUや米国の環境至上派が次に狙うタ ーゲットとして、6月に開催される国際捕鯨委員会(IWC)とも囁かれている。
ワシントン条約の第15回締約国会議を「禁輸措置」という一面で見る限り、今回のCOP10とは異なるように感じられるかも知れないが、問題の根底にあるのは絶滅危惧種などに対する実効的施策の一つであり「資源保護=生物多様性問題」といっても差し支えないだろう。
現在の日本で食卓に上るクロマグロの大半は、大西洋で捕獲された幼魚を地中海で成育して出荷されている。これはいわゆる「畜養」という水産システムである。禁輸規制を推進しているEU諸国やアメリカが問題としている点は、そのプロセスのスタートとなる幼魚の乱獲にあると指摘している。
しかし、これは資源管理の問題であって、ワシントン条約の定める絶滅危惧種の保護とは幾分異なっているという指摘も少なくない。
マグロ保護の是非はさておき、注目しなければならない点は、国際会議という場で討議され、採決される問題という点にある。仮に、そこで採択された条項が、これまでは自由な取引対象であった産物などを全面禁止へと転じるための規制であったとすると、そこに依存してきた産業の存続性をも揺るがす結果を導くことになる。
これは、人類が人類の生存権を脅かすことにもなりかねない大問題なのだが、残念ながら、往々にして国際会議における討議内容は、純粋に科学的根拠に基づき絶滅が危惧される生物の保護が優先されるのではなく、生活文化の異なる国々の感情的生物保護意識や、国家間の利害などが起点となっている場合も皆無とはいえない。
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日本では2002年に、大学がクロマグロの完全養殖を成功している。 これは世界初の快挙だ。そして、その先端水産技術により、クロマグロの人工種苗による量産化はまもなく実現する見通しだ。また、別の大学では、海水を使うことなく、淡水魚と海水魚を一緒に飼育できる「好適環境水」での飼育技術にも成功し、既に市場出荷に至っ ている。
こうした研究開発の背景には、数の減少が懸念されるという天然資源の保護という理想に向けての達成に加えて、日本だけでなく世界のクロマグロ市場への安定供給という大きなビジネスが横たわっていることも間違いない。
*ワシントン条約「絶滅が危惧される野生動植物の輸出入を規制する国際条約」国連条約の一つで、1973年にアメリカ・ワシントンDCにおいて80ヶ国の代表により合意され、 1975年に条約として発効。日本は1980年に批准した。現在、175ヶ国が批准している。
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産業活動のキーワードは「生物多様性」
国際社会の枠組みで話し合われる実質的な生物多様性問題
生物多様性条約第10回締約国会議(通称COP10)が、今年10月に名古屋で開催される。 COP10における議題は、1992年の「地球サミット」ではじまり翌93年に発効した生物多様性条約(CBD:Convention on Biological Diversity)の目的達成に向け、凡そ190の参加各国が地球規模での生物多様性の保全を視野にしての継続的な取り組みのなか、先の会議で求めた2010年目標の評価と、さらに次に掲げるべき目標の採択にある。
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2026年の現在、近年の世界海洋で、生息するクロマグロは数を増やしているというデータ報告がある。そのため、各国における漁獲量の割り当ても増加が見込まれている。ただ、これが資源保護によってもたらされたものかは、正確ではない。決して人為的な保護対策を軽んじるつもりはないが、気候変動などを起因とするごく一時的な変化であるのかも知れない。生命の増減とはそう容易く操れるものではないことだけは確かである。
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